維新愛国歌


青年日本の歌 〈昭和維新の歌〉

作詞・作曲:三上卓(海軍中尉)



汨羅(べきら)の淵に波騒ぎ

巫山(ふざん)の雲は乱れ飛ぶ

混濁の世に我れ立てば

義憤に燃えて血潮湧く





権門上に傲(おご)れども

国を憂ふる誠なし

財閥富を誇れども

民を念(おも)ふの情なし





ああ人栄え国亡ぶ

盲たる民世に踊る

治乱興亡夢に似て

世は一局の碁なりけり





昭和維新の春の空

正義に結ぶ丈夫(ますらお)が

胸裡百万兵足りて

散るや万朶(ばんだ)の桜花





古びし死骸乗り越えて

雲漂揺の身は一つ

国を憂ひて立つからは

丈夫の歌なからめや





天の怒りか地の声か

そもただならぬ響あり

民永劫(えいごう)の眠りより

醒めよ日本の朝ぼらけ





見よ九天の雲は垂れ

四海の水は雄叫(おたけ)びて

革新の機(とき)到りぬと

吹くや日本の夕嵐





ああうらぶれし天地(あめつち)の

迷ひの道を人はゆく

栄華を誇る塵(ちり)の世に

誰(た)が高楼(こうろう)の眺めぞや





功名何ぞ夢の跡

消えざるものはただ誠

人生意気に感じては

成否を誰かあげつらふ





やめよ離騒の一悲曲

悲歌慷慨(ひかこうがい)の日は去りぬ

われらが剣(つるぎ)今こそは

廓清(かくせい)の血に躍るかな



※ 海軍軍人であった憂国の士「三上 卓」による民族派の聖歌。
三上は、五・一五事件の首謀者で、戦後の海烈号事件を首謀し、三無事件にも連座した維新運動の指導者であった。



〔解釈〕


① 中華春秋戦国時代の詩人屈原が国を憂いて泪羅江に石を抱き入水自殺したように、今は多くの人が時代を嘆き自死している。
公序良俗は大いに乱れ、世の中は混沌としている。
そんな乱れ濁った世の中に直面している私は、憂国の心から怒りがこみ上げ、世を正さんという情熱が、心の底から湧き上がってくるのである。


② 高級官僚たちは己の地位に思いあがり、まるで国家を国民を心配する誠意がない。
財閥や政商たちは、自分たちの豊かな財産を自慢はするが、国家を心配する心がまるでない。


③ 国が興り、盛者必衰の理(ことわり)。
誠を見失った多くの国民は、栄華を誇る時代に溺れ、盲目的に利益や欲望を追求し、本来あるべき人の姿や国の姿を見失う群盲がやがて国を滅ぼすのである。
治乱興亡を繰り返してきた世界の歴史は、まるで悪夢に似ている。
世の中はまさに一局の碁の勝負と同じである。


④ 昭和維新決行の晴れやかな春の空の下、正義をもって契り、志を一つに結集した立派な同志たち。
心中必勝の志気旺盛な戦士は、人数とも十分に足りて有り余るほどである。
さあ挺身しよう潔く満開に咲き散る桜花のように…。


⑤ 腐敗した世を打倒し刷新を目指す草莽の身ではあるが、悠然と漂い動く雲のように、自由闊達な純粋境地にある。
我々が国を憂いて立ち上がるからには、雄姿と心意気を讃える歌がないことがあろうか。


⑥ 天の怒りなのか、地の声なのか。とても尋常ではない響きである。
今まさに永き闇が破られる時が来た。
人民国民よ、永遠の眠りより目覚め、ともに日本の明るい朝を迎えよう。


⑦ 見よ、高天原の神々は雲をお示しになり、維新の相指図を送っておられる。
大海原の神、須佐之男命も今や遅しと蜂起しろと願っている。


⑧ この腐敗した惨めな世で、誠を見失った民衆は混迷の道をひたすら歩んでいる。
一見、栄華を誇る見せかけの俗世を、誰が晴れ晴れしく眺めることが出来ようか、いや出来ない。


⑨ 名誉や手柄などというものは一時の夢のようなもので、すぐに消えうせてしまうものだ。
消えないものはただ真実のみである。
もし(人が我々の行動を)正義の意気だと感じてくれたならば、我々の行動の成功・失敗を、誰が良かった悪かったなどと議論しようか、いや、しないだろう。


⑩ 楚の政治家であった屈原が味わったような悲しい世の中は終わりにしよう。
悲歌をうたい憤り嘆く日々は今日で終わるのだ。
我らの正義の剣は今こそ、世の悪を駆逐する正義の血汐となって舞い踊るのだ。


民族の歌 〈青年思想研究会会歌〉

作詞:児玉誉士夫
作曲:古賀政男(作曲家)



興亡常に定めなく

盛衰それも定めなし

誇りぞ高し日ノ本の

栄えし時は幾歳(いくとせ)ぞ





権勢上(かみ)にはびこりて

暗雲国をおおうとき

民に救いの光なく

世は混乱の闇となる





天にこだまし地をゆする

怒りをこめた民の声

悪政にらむ銃口に

権力の座はくずれたり





昭和維新を目指しつつ

起ちし若人空(むな)しくも

事成らず牢獄に

流す悲涙(ひるい)を君知るや





春雪深き山王(さんのう)の

杜(もり)にわき立つ鬨(とき)の声

栄華の夢にふける身の

肺腑(はいふ)を抉(え)ぐる響きあり





国を憂うる真心を

上に伝うるすべもなく

受けし汚名は反乱の

賊とよばれる名は悲し





代々木原頭(げんとう)声絶えて

従容(しょうよう)死につく大丈夫(ますらお)が

天皇陛下万歳と

叫んだ願い忘れまい





昭和維新の雄叫(おたけ)びも

夜明けをまたず消え果てて

世は権勢の専横に

明日を開く道もなし





戦火ひとたび雲を裂き

戦雲国を襲うとき

誰か祖国を思わざる

誰か戦火を拒むべき





みじかき命知りながら

乙女の愛も受けずして

祖国の難に赴(おもむ)ける

男児を誰か称えざる



十一

ガダルカナルや硫黄島

いくさ甲斐なき戦場に

倒れし屍(かばね)同胞の

声無き声を誰が聞く



十二

生きて帰らぬ強者(つわもの)が

死地に飛び立つ特攻機

後に続くを信ずると

残せし言葉君知るや



十三

戦雲はれて敗残の

山河に空しい蝉時雨(せみしぐれ)

敵に降する屈辱の

この日を誰が想うべき



十四

核の威力に勝利せる

勝者が振るうその鞭(むち)は

神の裁きにあらずして

敗者を裁く事にあり



十五

勝者は永遠(とわ)に勝者かや

敗者は永遠に敗者かや

雲は流れて時は去り

再び仰ぐ国の旗



十六

民族の血を失いて

国の誇りは今いずこ

悲しかららずやはためける

その旗風に旗勢(きせい)なし



十七

民族の自負今はなく

今日の栄えとその富は

腐肉(ふにく)に集う者たちの

己を保つ栄光ぞ



十八

高楼天にそびえ立ち

大道国を貫けど

国を憂いて立ちあがる

我が同胞は幾人ぞ



十九

赤旗の波叫喚に

国は嵐の中に立つ

誰が祖国を憂えざる

国の未来を憂えざる



二十

聞け同胞(はらから)よ若人よ

起て同胞よ若人よ

後に続くを信ずるの

かの雄叫びを想起せよ



二十一

正義のこぶし振り上げて

今ぞ大地の声を聞け

汝の国土守れよと

大地の御霊(みたま)は応うべし



※ 政財界の黒幕と呼ばれた児玉誉士夫による作詞作品。
戦前は上海で児玉機関の長として暗躍し、戦後A級戦犯となるが莫大な資金力で政治家から右翼・やくざまで幅広く強力な影響力を持った巨魁である。
日本最大の右翼連合体であった全日本愛国者団体会議(全愛会議)から児玉系の団体を糾合し、より行動的な青年思想研究会(青思研)を作り上げた。
フィクサーとして栄華を極めたが、後にロッキード事件に巻き込まれ無念の死をとげた。