浅草弾左衛門所縁の地を歩く ③ 今戸神社

江戸切絵図で見ると縦長に白抜きの町があって、中が空白になっている。文字が逆さになっているので読みにくいが「穢多村俗ニ新町ト云フ(ぞくにしんちょうという)」と書きこまれている。

弾左衛門囲内 白抜きの町の地図

弾左衛門囲内 白抜きの町の地図

江戸期において士農工商の枠外の賤民・穢多・非人の総支配をしていたのが長吏頭矢野弾左衛門(代々襲名)であった。

その穢多頭(長吏頭)・弾左衛門の溜と呼ばれた囲内の地を訪ねてみた。

台東区今戸 今戸神社 

台東区今戸 今戸神社

台東区今戸 今戸神社

台東区今戸 今戸神社

台東区今戸 今戸神社御由緒

台東区今戸 今戸神社御由緒

台東区今戸 今戸神社 狛犬阿形

台東区今戸 今戸神社 狛犬阿形

台東区今戸 今戸神社 狛犬吽形

台東区今戸 今戸神社 狛犬吽形

台東区今戸 今戸神社 度数拝礼碑

台東区今戸 今戸神社 度数拝礼碑

弾左衛門屋敷一帯は塀で囲われ、浅草新町と呼ばれていた。7~10人の手代と60人役人がいた。支配下の裁判権を有し屋敷内には白州と牢屋もあった。

「囲内」には白山神社、そして東日本一帯に広がる弾左衛門支配下の公事訴訟や諸事で江戸に来た部落民が泊まる専用の旅籠屋数件、湯屋、髪結床も4軒あったそうである。その白山神社が合祀されている今戸神社を訪ねた。

今戸神社は、康平6年(1063年)源頼義・義家親子が奥州討伐の折、京都の石清水八幡宮を当地に勧進し、祈願したのが始まりであるといわれている。昭和12年、今戸八幡宮と隣接していた白山神社が合祀され今戸神社となった。

今戸神社の祭神は応神天皇である。

合祀の時、「伊弉諾尊(イザナギのミコト)」「伊弉冉尊(イザナミのミコト)」は祀られたが、白山信仰の象徴である「菊理媛命(ククリヒメのミコト)」は、何故か祀られなかった。

そして、その由来書にも合祀の説明は一切ない。

「菊理媛命」は「白山比咩神(しらやまひめのかみ)」と同一神である。黄泉国へ行って穢れを被ったイザナギを淨化させた女神であるため、ケガレ淨化との関わりを、つまり浅草弾左衛門とのかかわりを嫌ってのことであったかと推測してしまう。

 当社は元今戸八幡宮と称し、後冷泉天皇の時代康平6年(1063)源頼義、義家父子は勅令に依り奥州の夷賊安大夫安倍貞任、宗任を討伐の折今戸の地に到り、京都の石清水八幡を鎌倉鶴ヶ岡と浅草今津村(現今戸)に勧請しました。
 應神天皇の母君神功皇后は新羅を始め三韓親征の際、時恰も天皇を宿されその帰路天皇を九州筑紫で誕生されました。
 したがって、應神天皇を別名胎中天皇・聖母天皇とも称し、安産子育ての神と崇敬されております。
 伊弉諾尊・伊弉冉尊御夫婦の神は加賀の白山比咩神社の御祭神にして、嘉吉元年(1441)千葉介胤直が自分の城内に勧請しました。
 諾冉二神は子孫の繁栄を与えられると共に縁結びの神と崇敬されております。
 昭和12年今戸八幡と合祀され今戸神社と改称されました。
 今戸の地名は古くは武州豊島郡今津村と称し、その後今戸(別字今都)となりました。

(今戸神社案内板を引用)

台東区今戸 今戸神社拝殿

台東区今戸 今戸神社拝殿

台東区今戸 今戸神社 拝殿には大きな招き猫さまと福禄寿が御鎮座

台東区今戸 今戸神社 拝殿には大きな招き猫さまと福禄寿が御鎮座

台東区今戸 今戸神社 丸い絵馬の壁で囲まれた手水舎

台東区今戸 今戸神社 丸い絵馬の壁で囲まれた手水舎

台東区今戸 今戸神社 石なで猫という石像

台東区今戸 今戸神社 石なで猫という石像

台東区今戸 今戸神社 招き猫と沖田荘子の看板

台東区今戸 今戸神社 招き猫と沖田総司の看板

台東区今戸 今戸神社 今戸焼発祥之地碑と沖田総司終焉之地碑

台東区今戸 今戸神社 今戸焼発祥之地碑と沖田総司終焉之地碑

台東区今戸 今戸神社 沖田総司終焉之地碑

台東区今戸 今戸神社 沖田総司終焉之地碑

時が過ぎ近年となり、良縁&幸運大金を呼び寄せる「招き猫発祥の地」「縁結び」のお社として世の婚活女子に人気を呼んでいる・・・昨今は神社も商売なのか? 

台東区今戸 今戸神社 絵馬に囲まれた御神木

台東区今戸 今戸神社 絵馬に囲まれた御神木

私は東京生まれであったので穢多(エタ)・四ツ・部落民という言葉もその存在も知らずに育った。※西日本などでは「かわた」と呼ばれた。
中学生の時に読んだ住井すゑの「橋のない川」で初めてその存在を知ったのだった。

ちょうどその頃、父親に連れられ今井正監督の「橋のない川」の映画も見に行った。映像は差別のむごさをより鮮烈に表現し、心が壊れるほどの強烈な衝撃を受けた記憶が残っている。

その他に被差別部落を描いた小説では、明治の文豪・島崎 藤村の「破戒」が有名である。

他には永井 荷風も作品の中で差別部落問題をいくつか取り上げている。

忍者漫画として有名な白土 三平の「カムイ伝」も江戸時代を舞台に厳しい身分制度の中で非人の忍者が孤高の闘いを挑む名作である。

被差別部落の出身であった中上 健次の作品群、熊谷 達也の「七夕しぐれ」、上原 善広の「日本の路地を旅する」、野間 宏の「青年の環(全5巻)」、井上 光晴の「地の群れ」などがあるが、やはり圧巻は、塩見 鮮一郎の「浅草弾左衛門(全6巻)」であろう。

塩見 鮮一郎の描く主人公は長く闇に葬られてきた長吏頭であった。

「関東での穢多無慮一万戸。これを統轄したるものを弾左衛門といふ」その最後の代となった「十三代目弾左衛門」の天保から幕末、明治にかけて時の施政者に迫害翻弄され悩みながらもたくましく激動期を生き抜いた苛烈な生涯の物語である。

読まれていない方は是非読んで知ってほしい良書である。

浅草檀座衛門の屋敷があった浅草高校グラウンド

浅草檀座衛門の屋敷があった浅草高校グラウンド

 

※被差別部落関連本
浅草弾左衛門     塩見 鮮一郎(著) 小学館
橋のない川      住井 すゑ(著)  新潮文庫
破戒          島崎 藤村(著)  新潮文庫
七夕しぐれ       熊谷 達也(著)  光文社文庫
日本の路地を旅する  上原 善広(著)   文春文庫
青年の環       野間 宏 (著)    岩波書店
地の群れ井上 光晴(著)    新潮社
カムイ伝 白土 三平(著)   小学館

 

【関連寄稿】
※浅草弾左衛門所縁の地を歩く ① 白山神社

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※浅草弾左衛門所縁の地を歩く ⓶ 本龍寺
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