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「大祓詞」(おおはらえのことば)に見る国体観

国の始まりを天孫降臨と神武東征をもって表す「大祓詞」は、まさに建国の使命を記した祝詞である。

大祓の儀式は、その建国の使命を反省することが眼目である。

 

 大祓は、飛鳥時代晩期から宮中で年に二度、6月と12月の晦日に、半年の罪を祓い除く儀式が行われる。

 記紀神話に見られる伊弉諾尊(いざなぎのみこと)の禊祓(みそぎはらひ)を起源とし、六月の大祓を夏越(なごし)の祓と呼び、十二月の大祓は年越の祓とも呼ばれる。

我国で最も古い最も重要な、最も美しい文体の祓詞といわれ、天皇統治の理念が込められている

 701年の大宝律令により正式な宮中の年中行事に定められ、そのとき読まれた「大祓詞」は、平安時代に編纂された「延喜式」巻第八に記載されている。

 中世以降、各神社で年中行事の一つとして普及し、多くの神社の恒例式となっている。

 

 

 天皇・中宮・東宮が、内裏にて御贖(みあがもの)をお受けになる。その後、親王以下宮中百官や周辺の里人が内裏南裏正門の朱雀門に集まり、中臣氏(のち卜部氏)によって大祓詞が読まれ、卜部氏によって罪が祓われた。

 応仁の乱により一時廃絶したが、その後復活した。しかし江戸期に入ると徳川幕府の政治的意図により祈年祭と共に禁止された。

 明治4年、明治天皇が宮中三殿賢所の前庭にて大祓を400年ぶりに復活させ、翌明治5年に太政官布告をし「大宝律令」以来の旧儀の再興を命じ現在に至る。

現代の大祓詞は、その一部を省略し、訓みを改め、参集者に読み聞かせる宣命体から神様に申し上げる奏上体に改めたものである。

※ 御贖 祓のとき,罪や穢れをあがなうために神に差出すもの。

 

大祓詞は、建国の意義と祓いの内容から、前後二部に分けることができる

 前半は、建国の精神で、安国化(ヤスクニカ)こそが、天上から降臨なされた皇御孫命と地上で生まれ育った日本人とに課された、永遠の使命である事を説いている。(安国の語のみ唯一三度現れる)

※ 安国とは靖国であり、高度な秩序と豊かな文化の国を指す。

 

 後半は、理想の国体を国の隅々まで堅持するためには、罪をことごとく祓わなければならず、その祓う手段とその願い事をお聞きくださった天津神・国津神・八百万神たちが、願い事を叶えて下さる様子を美しい文体で表現している。

 

大祓詞は、四段に分かれる。

格段の大意

 

第一段 「高天の原に神留まり坐ます~天降し依さし奉りき」

 高天原での八百万の神たちの集議の結果、わが国(豊葦原瑞穂国=日本国)の安国化の使命を賜った皇御孫命は、地上の荒ぶる神々を鎮定したのち、天上の高天原から地上へ降臨なされた。

 

第二段 「かく出でば天つ宮事以ちて~天つ罪・国つ罪ここだくの罪出でむ」

 皇御孫命は、わが国の中心地(大倭日高見国)を安国として定め、そこに立派な宮殿を建てて、全国土を統治なさることになったが、国内では、様々な罪事が自然に発生する。

 

第三段 ~伊褒理を掻き別けて聞こしめさむ」

 もし罪事が発生すれば、高天原の神事に従ってお祓いを行い、天つ祝詞の太祝詞事を奏上して、神々にお祈りせよ、そうすれば、天津神や国津神はその願い事を聞き入れて下さるだろう。

 

第四段 「かく聞こしめしてば、罪と伝ふ罪は在らじと~聞こしめせ、と白す」

 もし天津神・国津神が、天つ祝詞の太祝詞事を聞いて下さったなら、すべての罪は一切なくなるだろうことを、天津神・国津神・八百万神たち共にお聞きください、と奏上する次第である。

 

『大祓詞』全文

高天原爾神留坐須 皇賀親神漏岐神漏美命以知氐

 

八百萬神等乎神集閉爾集賜比 神議里爾議賜比氐

 

我賀皇御孫命波 豐葦原乃水穗國乎安國登平介久

 

知食世登事依奉里伎

 

此久依奉里志國中爾荒振留神等乎婆 神問波志爾

 

問賜比 神掃比爾掃賜比氐 語問比志磐根樹根立

 

草乃片葉乎母語止米氐 天乃磐座放知天乃八重雲乎

 

伊頭乃千別伎爾千別伎氐天降志依奉里伎

 

此久依奉里志四方乃國中登 大倭日高見國乎安國登

 

定奉里氐 下都磐根爾宮柱太敷立氐

 

高天原爾千木高知里氐 皇御孫命乃瑞乃御殿仕奉里氐

 

天乃御蔭日乃御蔭登隱坐志氐 安國登平介久知食左牟

 

國中爾成出伝牟天乃益人等賀 過犯志介牟種種乃罪事波

 

天都罪國都罪許許太久乃罪出伝牟

 

此久出伝婆天都宮事以知氐 天都金木乎本打切里

 

末打斷知氐 千座乃置座爾置足波志氐 天都菅麻乎

 

本刈斷末刈切里氐 八針爾取辟伎氐

 

天都祝詞乃太祝詞事乎宣礼

 

此久宣良婆 天都神波天乃磐門乎押披伎氐

 

天乃八重雲乎伊頭乃千別伎爾千別伎氐聞食左牟

 

國都神波高山乃末短山乃末爾上坐志氐

 

高山乃伊褒理短山乃伊褒理乎搔別介氐聞食左牟

 

此久聞食志氐婆 罪登云布罪波在良自登

 

科戸乃風乃天乃八重雲乎吹放都事乃如久

 

朝乃御霧夕乃御霧乎 朝風夕風乃吹拂布事乃如久

 

大津邊爾居留大船乎 舳解放知艫解放知氐 大海原爾

 

押放都事乃如久 彼方乃繁木賀本乎 燒鎌乃敏鎌以知氐

 

打掃布事乃如久 遺留罪波在良自登 祓給比淸給布事乎

 

高山乃末短山乃末与里佐久那太理爾落多岐都

 

速川乃瀨爾坐須

 

瀨織津比賣登云布神 大海原爾持出伝奈牟 此久持出往奈婆

 

荒潮乃潮乃八百道乃八潮道乃潮乃八百會爾坐須

 

速開都比賣登云布神 持加加呑美氐牟

 

此久加加呑美氐婆 氣吹戸爾坐須

 

氣吹戸主登云布神 根國底國爾氣吹放知氐牟

 

此久氣吹伎放知氐婆 根國底國爾坐須

 

速佐須良比賣登云布神 持佐須良比失比氐牟

 

此久佐須良比失比氐婆 罪登云布罪波在良自登

 

祓給比淸給布事乎 天都神國都神

 

八百萬神等共爾 聞食世登白須

 

 

大祓詞本文(現行)

高天原に神留まります、皇が親神漏岐・神漏美の命以ちて、八百万神たちを神集へに集へ給ひ、
神議りに議り給ひて、我が皇御孫の命は、
豊葦原の瑞穂の国を安国と平けく知ろしめせ、と事依さし奉りき、
かく依さし奉りし国中に、荒ぶる神たちをば神問はしに問はし賜ひ、神掃へに掃へ賜ひて、
語問ひし磐根・樹根立ち草の片葉をも語止めて、天の磐座放ち、天の八重雲を伊頭の千別きに千別きて天降し依さし奉りき、
此く依さし奉りし。四方の国中と大倭日高見の国を安国と定め奉りて、下つ磐根に宮柱太敷き立て、
高天の原に千木高知りて、皇御孫の命の瑞の御殿仕へ奉りて、 
天の御蔭・日の御蔭と隠り坐して安国と平けく知食さむ国中に成り出む、
天の益人らが過ち犯しけむ種種の罪事は、天津罪・国津罪許許太久の罪出む、
此く出ば天津宮事以ちて、天津金木を本打ち切り末打ち断ちて、
千座の置座に置足はして、天津菅麻を本刈り断ち末刈り切りて、八針に取裂きて、天津祝詞の太祝詞事を宣れ、
此く宣らば、天津神天の磐戸を押披きて天の八重雲を、伊頭の千別に千別て聞食さむ
国津神は高山の末・低山の末に登り坐て、高山の伊褒理・低山の伊褒理を掻き別けて聞食さむ、
此く聞食しては、罪と言ふ罪は在らじと、科戸の風の天の八重雲を吹き放つ事の如く、
朝の御霧・夕の御霧を朝風・夕風の吹き掃ふ事の如く、大津辺に居る大船を舳解き放ち艪解き放ちて、
大海原に押し放つ事の如く、彼方の繁木が本を焼鎌の利鎌以て打ち掃ふ事の如く、
遺る罪は在らじと、祓へ給ひ清め給ふ事を、高山の末・低山の末より佐久那太理に落ち多岐つ、
速川の瀬に坐す瀬織津比売と伝ふ神、大海原に持出でなむ、
此く持ち出で往なば、荒潮の潮の八百道の八潮道の潮の八百曾に坐す速開都比売と伝ふ神、
持ち加加呑みてむ、此く加加呑みては、気吹戸に坐す気吹戸主と伝ふ神、根の国・底の国に気吹放ちてむ、
此く気吹放ちては、根の国・底の国に坐す速佐須良比売と伝ふ神、持ち佐須良比失ひてむ、
此く佐須良比失ひては、罪と伝ふ罪は在らじと、
祓い給ひ清め給ふ事を、天つ神・国つ神・八百万の神たち共に聞こしめせ、と白す。

 

 

おおはらえのことば(読み)

たかあまはらにかむづまります、すめらがむつかむろぎかむろみのみこともちて、やほよろづのかみたちをかむつどへにつどへたまひ、

かむはかりにはかりたまひて、あがすめみまのみことは、

とよあしはらのみづほのくにをやすくにとたひらけくしろしめせ、とことよさしまつりき、

かくよさしまつりしくぬちに、あらぶるかみたちをばかむとはしにとはしたまひ、かむはらひにはらへたまひて、

ことどひしいはね・きねたちくさのかきはをもことやめて、あまのいはぐらはなち、あまのやへぐもをいづのちわきにちわきて、あまくだしよさしまつりき、

かくよさしまつりしよものくになかとおおやまとひだかみのくにをやすくにとさだめまつりて、したついはねにみやはしらふとしきたて、

たかあまはらにちぎたかしりて、すめみまのみことのみづのみあらかつかへまつりて、

あまのみかげ・ひのみかげとかくりまして、やすくにとたいらけくしろしめさむ、くぬちになりいでむ、

あまのますひとらがあやまちおかしけむくさぐさのつみごとは、あまつつみ・くにつつみここだくのつみいでむ、

かくいでばあまつみやごともちて、あまつかなぎをもとうちきりすえうちたちて、

ちくらのおきくらにおきたらはして、あまつすがそをもとかりたちすえかりきりて、やはりにとりさきて、あまつのりとのふとのりとごとをのれ、

かくのらば、あまつかみはあまのいはとをおしひらきて、あまのやへぐもを。いづのちわきにちわきてきこしめさむ、

くにつかみはたかやまのすえ・ひきやまのすえにのぼりまして、たかやまのいぼりひ・きやまのいほりをかきわけてきこしめさむ、

かくきこしめしては、つみといふつみはあらじと、しなとのかぜのあまのやへぐもをふきはなつことのごとく、

あしたのみぎり。ゆうべのみきりを。あさかぜゆうかぜのふきはらふことのごとくおおつべにをるおおぶねをへときはなちともときはなちて、

おおうなばらにおしはなつことのごとく、おちかたのしげきがもとやきがまのとがまもちてうちはらふことのごとく、

のこるつみはあらじと、はらへたまひきよめたまふことを、たかやまのすえ・ひきやまのすえよりさくなだりにおちたきつ、

はやかわのせにますせおりつひめといふかみ、おおうなばらにもちいでなむ、

かくもちいでいなば、あらしほのしほのやおあひのやしほじのしほのやほあひにますはやあきつひめといふかみ

もちかがのみてむ、かくかがのみては、いぶきとにますいぶきどぬしといふかみ、ねのくに・そこのくににいぶきはなちてむ、

かくいぶきはなちては、ねのくに・そこのくににますはやさすらひめといふかみ、もちさすらひうしなひてむ、

かくさすらひうしなひては、つみといふつみはあらじと、

はらいたまひきよめたまふことを、てんつかみ・くにつかみ・やおよろずのかみたちともにきこしめせ、とまをす。

 


※ 高天原とは、天上にある神の世界であり、日本人が思い描く理想と規範となる世界。
  高天原は永遠の世界であり、歴代天皇も皇御孫命となる。

 

※ 大祓詞を読み解くと、日本の神は全知全能の神にはならなかった事が分かる。

 皇御孫命は、豊葦原の水穂の国と予祝された日本を安国として統治せよ、との建国の使命を賜り、高天原から降臨なされた。
 万民は皇御孫命の大御心を理解し、マツリゴトの平等性に感激し、敬愛をもって無私の奉公で報恩し、安国化を成就させた。
 その我が国体を永遠に堅持し、常に君民一体で建国の使命を反省し、全ての罪を祓い清めなければならないのである。
 つまり大祓詞は、罪穢を全て消滅させる為だけの事でなく、天下万民の安国を願い祓いをするのである。

 

 

謝 辞

 この原稿は、第47回国体文化講演会で講演された西岡和彦國學院大學神道文化学部教授の「大祓詞に見我がる国体観」のレジメと先生のお話をもとに作成したものである。

 

平成二十八年水無月 鈴木 誠厳

 

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